会長挨拶
 
鈴木文彦岩手県人連合会 会長
 2月2日快晴の上野東天紅で行なわれた“新年の集い”が、もう何年も前の出来事に思われるほど、この数ヶ月の変わり様は激しいものでした。
 現在6月16日、本来なら一週間前に“県人の集い”が開催され、皆さんとともにふるさと岩手を懐かしみ、岩手弁がとび交うにぎやかな会合をもてたはずでした。懇親、懇談をするふるさと会は、「密」をさけては通れません。残念ながら中止を決断せざるを得ませんでした。
 まだコロナウイルス終息の兆しが見えず、心は晴れぬ闇ですが、そんななかで、岩手の明るい光が私たちを勇気づけてくれています。
 まずは5月6日の朝日新聞川柳欄に載った愛知県の女性の句を紹介します。

    何県より岩手の数をまず確認
 
感染者ゼロは、いまの時点も燦然と輝いています。米国の経済誌 WSJ ウオール・ストリート・ジャーナルでも「考えられない奇跡」と報じられました。

 次に「菊池雄星文化プロジェクト」のニュースです。県内の小中高生を対象に課題図書を読んだ感想文を募集し12月に表彰するという第53回岩手読書感想文コンクールにMLBの菊池雄星投手が協力を申し出たのです。
 これを報じた4/26の岩手日報は壮観でした。見開き2ページ全面を使って、この協力を決めた思いと読書への思いを掲載しています。
 読書家だということは知っていましたが、記事を読んで脱帽しました。
「寝る前に1時間、本を読む時間をつくっている」「本屋に行くと、真っさらな状態で、全部のコーナーを回る」「一番したいのは人に出会うことだが、亡くなった人には会うことができない。それを本がかなえてくれる」
 そしてこうも言っています。
「学ぶことは破壊することとイコールだと思っている。学ばないとこれが正しいと固定してしまう。(略)それでは成長がない。学び続けると、これが正しいと思っていたがどうやら違うぞの連続だと思うんですよ。本を読む、勉強することの醍醐味はそこに感じる」

 ステイホームの闇のなかで、私にとってのもうひとつの光明も野球でした。
 かつて甲子園を目指し、いまでも朝ドラ「エール」のモデル古関裕而作曲「栄冠は君に輝く」の入場行進がはじまると涙 滂沱 ぼうだの者として、8月に決まった「甲子園高校野球交流試合」はこの上ない吉報でした。春、夏の甲子園を閉ざされた球児へのせめてもの贈り物をよくぞ考えたと拍手を送りたい。さまざまな問題があるとはいえ、センバツ32校の球児たちに代表して聖地の土を踏ませようというイキな計らい、しかも一試合限定というのもいいじゃないですか。
 オリンピックが延期になり、ほとんどのスポーツ・文化イベントの火が消えた寂しい今年の夏に、ポッと希望の灯がともるような気がしました。

 感染症の歴史から鑑み、事態の先行きは不透明ですが、この数ヶ月に味わったコロナ体験の拠り所のない混沌は、まったくの想定外でした。
 何よりも優先されるべきだった自由が制限されざるを得なくなり、自由か安全か二者択一を迫られる状況に追いこまれ、しかもその状況が刻一刻と変化する厄介さに翻弄されています。
 まさに暗中模索ではありますが、次世代にむけて、私たちが感じたこと、考えたこと、行動したことを記録として遺してはいかがでしょうか。
「きずな」編集部では、ただいまプランを練っているところです。

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