会長挨拶
 
岩手県人連合会会長岩手県人連合会会長

ご挨拶

 このたび岩手県人連合会会長をお引き受けした鈴木です。第43回岩手県人の集いでのご挨拶に先だち、誌面をお借りして自己紹介をさせていただきます。
 生まれも育ちも盛岡ですが、大学からの東京生活は50年を超えてしまいました。両親が高齢だったこともあり、毎年正月、盆には帰郷していたので、故郷を遠く感じることはありませんでした。ましてや職業が出版社の編集者でしたので、三好京三さん、中津文彦さん、高橋克彦さんを訪ねる機会にも恵まれていました。
 ですが、正直中し上げて、人一倍愛郷心が強かったとは思いません。ジワジワと故郷を感じるには余りに頻繁すぎて、その思いに浸る時間がなかったともいえます。そんなこともあって、ふるさと会などには失礼をしておりました。
 ところが、6年前の3.11の大震災です。東京に居てただ呆然とするばかりでした。被災地の方々に何もできない自分を痛感しました。ちょうど三ケ月後にはそれまで勤務していた会社を退職し、環境も変わりました。
 夏・秋と三陸を訪れたのですが、以来、敬して遠ぎけて自分の任ではないと思っていた故郷に関する事柄を、一歩踏み出してやってみよう、引き受けてみようと改心しました。
 「三屋清左衛門残日録」という藤沢周平さんの小説の中に、隠居した清左衛門が「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」の心境を吐露するシーンがありますが、そんな気持ちです。
 10年ほど前まで会長をつとめられた井上ひさしさんは、私にとって師父のごとき方でした。このたびも、師父の導きを感じております。
 会員の皆様の故郷を思うお心に寄りそって、どうにか任期をまっとうできることをいまは願うばかりです。ご協カのほどをよろしくお願いいたします。


略歴

 昭和21年盛岡市生まれ。早稲田大学法学部卒後44年(株)文藝春秋入社。営業畑を3年経験後「週刊文春」を都合6年、「スボーツグフフィックNumber」編集長。ほかは文芸維誌「オール讀物」「文學界」「別冊文藝春秋」の編集者。
 平成8年から12年まで「オール讀物」編集長。のち文芸編集局長、常務取輪役を務めた。
 担当した作家は、井伏鱒二、松本清張、五昧康祐、池波正太郎、山田風太郎、山口洋子、伊集院静など多数。
 岩手に同伴した作家も藤沢周平、佐野洋、色川武大、三浦哲郎、渡辺淳一、宮城谷昌光など。浅田次郎「壬生義士伝」では方言指導を手 伝った。
 平成23年(株)文藝春秋退社後、昨年までハ重洲ブックセンター顧問。現在鶴岡市立藤沢周平記念館、紫波町立野村胡堂あらえびす記念館通営委員、「北の文学」編集委員を務める傍ら、「いわて経済同友」にエッセイを隅月連載するなど文筆家として活動中である。

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